レンタルサーバーの会社メールを取り込むには、IMAPで外部から接続できることが条件です。移したいメールもサーバー上に残っている必要があります。あわせて、移行先のユーザーとDNSの管理先を確認します。
ここで分けて考えたいのは、過去メールの取り込みと、これから届くメールの受信先変更です。過去メールはIMAP経由でコピーします。新着メールはMXレコードをGoogle Workspace向けに変更して受信先を切り替えます。
本記事は、独自ドメインのメールをレンタルサーバーで運用している事業者が対象です。Microsoft 365・他のグループウェア・個人用Gmail・別のGoogle Workspaceからの移行は扱いません。
移行元と移行先ユーザーの対応
最初に、現在のメールアドレスとGoogle Workspaceで作るユーザーを対応させます。移行元のアドレスだけを一覧にしても、誰のGmailへ取り込むかが決まっていなければ作業を始められません。
Googleのツールは、一つの移行元を一人の移行先へ取り込むほか、複数の移行元を一人へまとめることもできます。一つの移行元を複数のユーザーへ分配することはできません。統合する場合は、誰が過去メールを閲覧するかを先に決めます。
| 確認項目 | 記入する内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 移行元アドレス | 現在使っている会社メール | 対象を漏らさないため |
| 利用者 | 実際にメールを使う人 | 共有アカウントを見つけるため |
| 移行先ユーザー | Workspaceで作るアドレス | 取り込み先を決めるため |
| サーバー上の容量 | 現在残っているメール量 | 対象量と保存容量を確認するため |
| 対象期間 | いつからのメールを移すか | 不要なデータを含めないため |
| 旧環境の終了時期 | いつまで確認できるか | 切替中の確認先を残すため |
一つのメールアドレスを複数人で共有している場合は、その状態も記録します。今後の共有窓口はGoogleグループやGmailの委任などを検討しますが、過去メールの取り込み先はWorkspaceのユーザーです。Googleグループをこのツールの取り込み先として指定することはできないため、今後の受信方法と過去メールの保管先を分けて決めます。
退職者のアドレスや、すでに使っていない窓口をそのまま移す必要はありません。業務上残すメールと、今後受け取る宛先を分けて決めます。
取り込みを始める前に、移行先ユーザーを実際に作成し、ライセンスを割り当ててGmailを有効にします。インポートツールがユーザーを自動作成するわけではありません。見積り時には予定を整理し、実行時には準備を完了しておくという順序です。
サーバー上にメールが残っているか確認する
IMAPのインポートで対象になるのは、移行元サーバーから取得できるメールです。パソコンのメールソフトにしか残っていないメールは、同じ方法では取り込めません。
Webメールで過去のメッセージを確認できる場合は、サーバー上に残っているかを判断する手がかりになります。ただし、メールソフトの設定や保存期間によって状態が異なります。レンタルサーバーの管理画面にあるメールボックス使用量も確認してください。
「受信したことがある」ことと「サーバーに残っている」ことは別です。メールソフトが受信後にサーバーから削除する設定だった場合、古いメールが端末だけに残っている可能性があります。
移したい期間のメールが見つからない場合は、その端末内データを別の方法で扱えるかを先に検討します。標準のIMAP移行へ含める前提では進めません。
IMAP接続の条件を確認する
Googleのデータ インポート ツールから取り込むには、移行元のIMAPサーバーへGoogleから接続できる必要があります。公式の移行ガイドでは、信頼できるTLS証明書を使い、GoogleサービスからアクセスできるIMAPサーバーが対象として案内されています。
Google公式のトラブル対応では、IMAPSのポート993が確認項目に挙げられています。接続元となるGoogleのIPアドレス範囲と、利用者ごとの認証情報も確認します。レンタルサーバー会社の仕様書だけで判断できない場合は、サポートへ外部からのIMAP接続条件を確認します。
確認する内容は、サーバー名・ポート・暗号化方式・ログイン名です。二段階認証などを利用している環境では、アプリパスワードが必要になる場合があります。
インポートを実行するのは、自社のGoogle Workspaceの特権管理者です。管理コンソールのすべての機能を使える権限を持つ担当者を確認し、移行元と移行先のIMAP利用条件も調べます。接続先のサーバー名は、MX切替後も旧サーバーを参照できるものを事業者に確認してください。
認証情報はAdRegionへメールやフォームで送らないでください。原則として画面共有中に自社側でGoogle管理コンソールへ入力し、操作する人と入力方法を作業前に決めます。
メール以外は同じ方法で移らない
IMAPから取り込む対象は、サーバー上のメールとフォルダ・サブフォルダです。送信済みや下書きも対象に含まれますが、メールと添付ファイルの合計が25MBを超えるものや、Gmailがブロックする添付ファイルなどは取り込めません。サーバーに残っていることだけで、全件を移せるとは判断しないでください。
カレンダー・連絡先・Google ドライブなどは、このメール取り込みの対象外です。レンタルサーバーのWebメールで使っているアドレス帳や予定表があれば、別に扱います。メールソフトの振り分けルールや署名も、自動的にGoogle Workspaceへ再現されるとは限りません。
移行前に「メール環境」とひとまとめにせず、メール本文・フォルダ・連絡先・署名・ルールへ分けてください。今回移すものと、利用者が再設定するものを決めると見積り範囲が明確になります。
DNSの管理先をメール取り込み前に確認する
過去メールを取り込むだけでは、新着メールの受信先は変わりません。旧サーバーで受信を続けながら事前にコピーし、準備が整ってからMXレコードで受信先を切り替えます。DNSの管理先を調べることと、取り込み前にMXを変更することは別です。
ドメインの購入先とDNSの管理先は同じとは限りません。Webサイトの制作会社が管理している場合は、現在のMX・SPF・DKIM・DMARCを控えてもらいます。Webフォームや予約システムなど、会社ドメインからメールを送るサービスも確認します。
MX変更がインターネット全体で認識されるまで時間がかかる場合があります。Google公式では最大72時間かかる可能性が案内されています。切替操作をした時刻と、すべての送信元からGoogleへ届く時刻を同じものとして扱わない方が安全です。
変更前のDNS値は記録します。切替後に重大な問題が起きた場合の判断者と、以前の受信先へ戻す条件も決めます。
旧メール環境は確認が終わるまで残す
メールのインポートが完了しても、すべてのメッセージが同じ状態で取り込まれるとは限りません。Googleのレポートでは、利用者ごとの成功・失敗件数や、取り込めなかった項目を確認できます。
インポート後は、必要な期間のメールをGmailで確認します。フォルダやラベルの状態も利用者が確認してください。新着メールについては、社外アドレスから受信し、会社メールから返信できることを試します。
事前の取り込み後に旧サーバーへ届いたメールは、追加分をコピーする「差分インポート」で取り込みます。MX切替後も旧サーバーの新着を確認し、差分の取り込み結果まで照合してください。初回のインポート完了だけを解約の判断にしないことが大切です。
この確認が終わる前にレンタルサーバーを解約すると、旧環境にしか残っていないメールを確認できなくなる可能性があります。切替中は新旧の受信箱を確認できる状態にしておきます。
結果レポートは、管理コンソールでインポートを終了する前に保存します。終了後は設定やレポートへアクセスできなくなるためです。MXを以前の値へ戻しても、新旧に分かれたメールが自動的に統合されるわけではありません。
見積り前の六項目をそろえる
移行支援を相談する前に、次の六項目を確認します。
- 利用中のレンタルサーバーと契約プラン
- 移行するメールアドレスと利用者
- サーバー上に残るメールの対象期間
- 外部からのIMAP接続条件
- Google Workspaceで作る移行先ユーザー
- DNSの管理先と変更できる人
サーバー上のメール・IMAP接続・DNS管理先のいずれかが分からなければ、先に現在の管理会社へ確認します。サーバー上にメールが残っていない場合は、標準の移行対象にできません。
六項目が分かれば、アカウント数と作業内容を確認して見積りへ進めます。会社メールで作成済みのGoogleアカウントがある場合は、Googleアカウントの事前確認も先に行ってください。
移せる範囲を整理したら、管理コンソールで過去メールをインポートする手順で作業の流れを確認できます。事前コピー・受信先切替・差分確認を分けた計画を立ててください。