会社のメールアドレスを作るときは、Google Workspaceの申込みから始めるのではありません。先に、独自ドメインと契約名義を決めます。最初の管理者、必要なメールアドレス、DNSの管理先も申込み前の確認事項です。
この5項目が分かれば、自分で進める部分と、制作会社や導入支援者へ依頼する部分を分けられます。反対に、管理者やDNSの所在が曖昧なまま設定を始めると、申込み後に作業が止まりやすくなります。
すでにレンタルサーバーで会社メールを運用している場合は、新規開設ではなく移行計画が必要です。本記事では、過去メールを移さない新規導入を扱います。現在のメールを引き続き使う場合は、Google Workspace移行支援の案内をご確認ください。
会社メールを作る前に、完成形を決める
独自ドメインは、メールアドレスの @ より後ろに使う自社専用の文字列です。ドメインを取得しただけではメールを送受信できません。Google Workspaceへ申し込み、ドメインの所有権を確認します。その後、利用者とメールの配送先を設定します。
最初に、誰が自分のアカウントへログインするかを決めます。代表者や従業員には、一人ずつユーザーアカウントを作るのが基本です。Googleアカウントは一人で使うことを前提としており、同じパスワードを複数人で共有する運用には向きません。
info@ や contact@ のような窓口は、受け取る人によって作り方が変わります。一人だけで受けるなら、その人のメールエイリアスを利用できます。複数人で扱う場合は、Googleグループやメールの委任を検討します。どちらも、窓口用パスワードを共有せずに運用するための選択肢です。
申込み前に、次の内容を一枚のメモへまとめてみてください。
| 決めること | 記入する内容 | 確認先 |
|---|---|---|
| 独自ドメイン | 新規取得か、取得済みのドメインを使うか | 代表者、ドメイン契約者 |
| 契約名義 | ドメインとWorkspaceを契約する会社名義 | 代表者、経理担当者 |
| 管理者 | 最初の管理者と、別の復旧用メール | 管理を継続する担当者 |
| 利用者と窓口 | 個人アドレスと info@ などの宛先 | 実際にメールを使う人 |
| DNSと既存利用 | DNS管理先、Webフォームなどの送信元 | 制作会社、現在の管理者 |
ここでは将来必要になるアドレスをすべて作る必要はありません。開業時に実際に使う人と窓口に絞ると、ライセンスと管理方法を判断しやすくなります。
契約名義と管理権限を自社に残す
会社メールは、取引先との連絡や各種サービスの登録に使い続ける業務基盤です。Google Workspaceとドメインは、自社名義で契約することをおすすめします。支払い方法と管理者アカウントも、自社で管理します。
設定を制作会社や支援会社へ依頼しても、所有者まで外部へ移す必要はありません。お客様が契約と認証情報を持ち、作業者は承認された範囲で設定を支援する形に分けられます。
| 対象 | 自社で保持するもの | 外部へ依頼できること |
|---|---|---|
| ドメイン | 契約名義、更新、支払い | DNSレコードの設定作業 |
| Google Workspace | 契約、請求、管理者 | 初期設定と開通確認 |
| 管理者 | パスワード、2段階認証、復旧情報 | 設定項目の案内 |
| メール設定 | 変更の承認 | MXやメール認証の確認 |
最初の管理者を決めるときは、復旧先も用意します。復旧用メールには、作成中のGoogle Workspaceとは別に、管理者本人がアクセスできるアドレスを使います。会社メールへ入れないときに、会社メールでしか確認できない構成を避けるためです。
申込み前にDNSの管理先を確認する
Google Workspaceで独自ドメインを使うには、ドメインの所有権を証明します。一般的には、Googleが指定する確認用のTXTレコードをDNSへ追加します。この作業には、Google Workspaceの管理者権限とは別に、DNSを変更できる環境が必要です。
ドメインを購入した会社と、DNSを管理している会社は同じとは限りません。ネームサーバーを別のサービスへ変更していると、購入元へログインしても目的のDNSレコードが見つからない場合があります。
申込み前に、次の三者を確認します。
- ドメインの契約名義と更新費を支払っている人
- 現在のネームサーバーとDNSレコードを管理している会社
- DNS変更を実行または承認できる人
Webサイトを制作会社へ依頼している場合は、現在の管理先へ確認しても問題ありません。ドメインをすぐ移管するかどうかより、誰がどこでDNSを変更できるかを明らかにすることが先です。
開通までを七つの工程に分ける
会社メールの開通は、一つの設定画面だけで完了する作業ではありません。各工程の目的と完了条件を分けると、どこで止まっているかを確認できます。
| 工程 | 目的 | 主に操作する人 | 次へ進む確認 |
|---|---|---|---|
| 1. 計画 | ドメイン、利用者、窓口を決める | 事業者 | 必要な契約とアドレスが決まった |
| 2. ドメイン | 新規取得または管理先を確認する | 事業者 | 契約とDNSの管理先が分かった |
| 3. 申込み | Workspace契約と管理者を作る | 事業者 | 管理コンソールへ入れる |
| 4. 所有権確認 | ドメインを使用できることをGoogleへ示す | DNS管理者 | ドメインが確認済みになった |
| 5. ユーザー設定 | 個人メールと窓口を用意する | Workspace管理者 | 必要な宛先が揃った |
| 6. DNS設定 | 受信先と送信メールの認証を設定する | DNS管理者 | 公開レコードを確認できた |
| 7. 開通確認 | 社外との送受信を試す | 利用者と管理者 | 合意したテストを完了した |
ドメイン確認で追加するTXTレコードと、受信先をGoogleへ変更するMXレコードは目的が違います。所有権を確認できても、MXを変更するまでは会社メールの受信先は切り替わりません。
MXを変更する前に、ユーザーと窓口アドレスを用意します。切替後は社外のアドレスから受信を試し、会社メールから返信できることを確認します。DNSの反映には時間がかかる場合があるため、変更操作と開通確認を同時刻の完了として扱わない方が安全です。
変更前のMXとメール認証レコードは、元の値を控えておきます。新しい受信先で問題が起きた場合は、ほかのレコードまで続けて変更せず、DNS管理者へ確認します。以前の受信先へ戻す判断が必要になったときは、控えた値を復旧の基準にできます。
DNSの切替中は、送信元によって新旧どちらのメール環境へ届くかが変わる場合があります。開通確認が終わるまでは、以前のメールボックスも確認できる状態にしておいた方が良いです。
Webフォームなどの送信元を先に洗い出す
メール開通では、受信先だけでなく、会社のドメインからメールを送っているサービスも確認します。Webサイトの問い合わせフォーム、予約システム、請求サービスなどが該当します。
SPFは、そのドメインから送信を許可するサーバーをDNSで示す仕組みです。Google Workspaceの設定だけを見て既存のSPFレコードを置き換えると、別のサービスから送る正規のメールが認証に失敗する可能性があります。Webサイトの管理者や利用中のサービスへ、送信元の確認が必要です。
DKIMとDMARCも、文字列を追加するだけの作業ではありません。DKIMはGoogle Workspace側で鍵を生成し、DNSへ公開したあとに認証を開始します。DMARCはSPFとDKIMの状態を確認したうえで、レポートを見ながら段階的に適用する考え方が基本です。
新規導入時にすべての設定が確定しない場合は、未完了の項目を記録します。確認する人と次回確認日も残してください。厳格なDMARCポリシーを急いで設定するより、まず正規の送信元を把握する方が重要です。
既存のGoogleアカウントを確認する
会社メールをまだGoogle Workspaceで使っていなくても、そのアドレスでGoogleアカウントを作成している場合があります。GoogleドライブやGoogle広告などへ、会社メールでログインしていないかを利用者へ確認してみてください。
同じメールアドレスの個人用Googleアカウントがある状態で、Google Workspaceの管理対象アカウントを作ると、アカウント名が競合します。既存アカウントで利用しているサービスやデータによって対応が変わるため、新しいユーザーを作る前に状態を確認します。
「このドメインはすでに使用されています」と表示される場合は、同じドメインのGoogle Workspace契約がすでに存在する可能性もあります。社内や以前の委託先に管理者がいないかを確認し、通常の新規申込みとは分けて整理します。
制作会社がドメインを管理している場合
制作会社がDNSを管理していても、Google Workspaceを導入できます。事業者の了承を得たうえで、制作会社へ必要なレコードの追加や変更を依頼します。
現在のMXとメール認証レコードを先に確認します。Webサイトやフォームに関係するレコードも確認対象です。既存設定を消してから作り直すのではなく、現状を控え、今回変更する項目だけを合意します。
将来、制作会社や支援会社が変わることもあります。その後も会社メールを管理できるよう、ドメインの契約名義と更新費の支払いは自社で把握しておいた方が良いです。管理画面の連絡先も確認します。必要であれば、開通後に譲渡や移管を検討できます。
自分で進める範囲を判断する
新規ドメインを自社名義で取得し、DNS管理画面へ入れるなら、自社で設定を進めやすい状態です。ただし、Google Workspace以外の送信元がないことも確認してください。この記事の準備表と工程表を使い、操作する人と完了条件を一つずつ確認します。
既存ドメインを使う場合は、設定前の確認が増えます。制作会社がDNSを管理している、Webフォームなどの送信元が複数ある、同じ会社メールのGoogleアカウントがある場合も同様です。過去メールも引き継ぐ場合は移行支援の範囲となり、新規導入とは工程が異なります。
まずは準備表の5項目を記入してください。不明な項目が残る場合は、申込みを進める前に現在の管理先へ確認します。確認先から分からないときは、メール開通についてご相談ください。